「記録が伸びる!陸上競技メンタル強化メソッド」 TERACCOの本棚 -10-

「メンタルが弱い」は、どうやったら克服できるのか?

「記録が伸びる!陸上競技メンタル強化メソッド」 井村久美子著、実業之日本社

「いざというときにミスをする」「緊張で実力が出せない」・・・など、スポーツの世界では、特にメンタルの弱さが結果に大きく影響してしまいます。
だからといって、メンタルを強くするにはどうしたらいいのか、そんなに簡単に克服できるものでもありません。
通常、専門的なサポートを受けられるのは限られた選手だけでしょう。
どうにかしたいけど、その方法がわからず、いつも同じ状況の繰り返しという人は少なくないはずです。

 

「自分で考える」ことで、メンタルを強くすることができる

著者は、メンタルを強くする基礎として、まず自分の運動に対する「強み」と「弱み」を理解することだとしています。

「長所」、「短所」と言い換えても構いません。技術的に自分はどこが強くて、どこが弱いのか。性格やメンタル面でどんな強さや弱さがあるのか。それを理解しておくことが、競技力を向上させ、試合で最大限のパフォーマンスを発揮するためには欠かせない要素なのです。

 

これがもし、締め付けの強い指導を受けて競技生活を送っている場合は、自分で考えて行動することができず、言われたことしかできなくなってしまうといいます。

メンタルトレーニングの世界ではよく使われる言い方ですが、自分自身について分析する「自己理解」がとても大切になるのです。
では、自己理解がないままに競技に取り組んでいると、どんな問題が起きるのでしょうか?

第三者の評価で動いてしまうため、気持ちにムラが出てきます。それでうまくいけば良いのですが、当然、うまくいかないこともあります。すると今度は感情が「怒り」「悲しみ」「不安」に変わります。先生が言ったからやってみたのに・・・と。不信感が生まれ、指導者との関係性がどんどん悪化し、典型的な負のサイクルができ上がってしまいます。

 

自己理解の方法のひとつとして、著者は「自分の取り扱い説明書を作る」ことを勧めています。

ノートに細かく記録している人は、試合で厳しい局面を迎えたときに、取り扱い説明書の該当ページを開き、「こんなときは、こうして修正すればいいんだ」とすぐに解決できます。具体的な対策を立てれば立てるほど、局面を乗り越えられる可能性は高まり、そうした経験が取り扱い説明書にたまっていくことで、本番での強さがさらに身につくことでしょう。

 

緊張して、実力が出せない人は

ともすると、つい自分の短所が気になり、他人と比べて、自信を失いそうになることや、周囲の大きすぎる期待から、ガチガチに緊張してしまうこともあるかもしれません。そんな人は、「結果」にこだわりすぎているのかも。

そんなとき、何秒で走る、というような「結果」を目標とするのではなく、ここだけはやり切るという「行動」を目標にして、そのひとつひとつの行動の積み重ねに自分でOKを出していくといいということのようです。

 

この本には、自己理解を深める方法のほかに、試合前の調整法や準備、本番や試合後のメンタル強化法、また種目別に必要なメンタルなどが詳しく書かれています。
そして、そんな中でも、「自分が興味を持って取り組んだことはどんなことでも財産になり、次の道にも持ち越せる」・・・
勝利至上主義に陥ることなく、自分の好きなことを思い切り楽しんでほしいといいます。

著者は、女子走り幅跳び日本記録保持者であり、「日本メンタルトレーナー協会」の代表理事でもある方だそうです。
この本では陸上競技においてのパフォーマンス向上を目的として書かれていますが、読んでみると、他のスポーツ競技やテストや受験などのメンタル強化にも役立ちそうな内容が盛りだくさんな1冊でした。     (2018/6/27)

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