「ミゲル流 人生を切り開く『自信』のつけ方」 TERACCOの本棚 -7-

「トライ&エラー」で身に着く決断力―子どもの小さな才能の芽を伸ばしていくために必要なこと―

「ミゲル流 人生を切り開く『自信』のつけ方」 ミゲル・ロドリゴ著、赤ちゃんとママ社

著者は、2009年から約7年間フットサル日本代表監督をしていたフットサル指導者で、以前放送された「奇跡のレッスン~世界の最強コーチと子どもたち(サッカー編)~」(NHKBS1)での子どもたちへの指導は大反響をよびました。
本書には、フットサル日本代表チームを率いた経験や子どもたちとのレッスンで気づいたことなどをもとに、特に日本の子どもたちの心を自信で満たすにはどうしたらいいか、ということに主眼を置いて、子育てやスポーツの指導をする際のアドバイスがふんだんに盛り込まれています。

 

サッカー先進国であるスペイン出身の著者から見た、日本の子どもたちの印象

著者の日本人への印象は、規律正しさ、協調性の高さ、奥ゆかしさなど、スペインの友人に日本自慢をするほど感心しているそうなのですが、ことスポーツにいたっては、そうもいっていられないようなのです。

地域のサッカーチームの練習に参加するとき、私は子どもたちの前に立ってあいさつをしますが、彼らを見渡すと、不安と緊張でカチコチに固まっているのがわかります。彼らはとてもシャイです。そして感情を表に出さない子が多いのも特徴と言えるでしょう。しかし同時に、素直で謙虚。私のアドバイスを聞きもらすまいと、真剣な子がほとんどです。
また、スポーツで勝つために足りないものとして、こうも述べています。
日本人に欠けているのは、「自分が今しなくてはならないことを、自分の意思で自由に選び取り、自分の責任で決断する能力」です。
<中略>
「自分で決める」。たったそれだけのことが、どうしてこんなにも難しいのでしょうか。
それは、大人からの過剰な期待に応えなければならない、つまりは怒られないように、失敗をしないようにしようとするからだといいます。
自分で決める力を育てていくためには、挑戦して失敗する、そこから学んだことを糧として、また自分で判断して挑戦していく―この「トライ&エラー」の繰り返しは、スポーツだけではなく子育てにおいても非常に大切なものだと言えるでしょう。

 

トライ&エラーを怖がらずにできるように習慣づけるために必要な「ほめる」こと。

本書では、そのほめ方のメソッドや著者自身の子育てについても紹介されていますが、そこからは子どもたちへの溢れんばかりの愛情と子どもを育てる大人へのエールを感じとることができます。

子どもの才能はまだ小さくて、その光はとても弱いことが多いのです。子ども自身がその才能に気づいていないこともあります。
<中略>
ダメ出しすれば、その代償として彼はミスを恐れ、縮こまって本来の力を発揮できなくなってしまいます。

今日、子どもが学校から帰ってきたら、しっかりと向き合って心を込めて「おかえりなさい」と言ってみましょう。子どもが話をしだしたら、真剣に聞く時間を作りましょう。
<中略>
子育てには、マニュアルもノウハウもありませんし、百戦錬磨の達人もいません。考えながら、不安を乗り越えながら、それでも自分でやり抜くしかない、人生で最も大切なプロジェクトです。本書がその子育てプロジェクトの一助になれば、とても幸せです。(あとがきより)

日々の忙しさの中で、子どもとしっかり向き合うというのはなかなか難しいことですが、著者の子どもに対する姿勢は素晴らしいものです。もっとこうすればよかったのに…と言いたくなるところを、「子どもが決断したことをほめる」―これをスタートにすると、子どもは心を開き、自信で満たされるようになっていくのかもしれません。子どもの可能性の芽を伸ばすために、子育てのサポートとなる心強い一冊です。  (2018/1/20) 

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